佐久市で農業をやりたい人が農地を買うには?
佐久市への移住を検討し、新しい人生のステージとして農業を始めたいと考えている方へ。
農業未経験からのスタートで最初に立ちはだかる大きな壁が「農地の取得」です。
「農地ってどうやって買うの?」
「農業経験がなくても農地を取得できるの?」
「佐久市ではどんな支援が受けられるの?」
こうした疑問にお答えします!
実際、農地の取得には農地法という法律が関わっており、一般的な不動産取引とは大きく異なります。
しかし、正しい知識を理解すれば、農業未経験者でも確実に農地を取得し、新規就農への道を切り開くことができます。
本記事では、佐久市で新規就農を目指す方に向けて、農地取得の基礎知識から具体的な手順、資金調達方法、そして失敗を避けるためのポイントまでを徹底解説します。
2023年の法改正により農地取得のハードルが大幅に下がった今こそ、新規就農のチャンスですよ!
※記事中の数値等はシミュレーションが含まれている場合があります。
また、最新情報は各担当課へご確認ください。
基本的に農家以外は農地を買えない:農地法の基礎知識

農地法が存在する理由
農地は、一般的な土地や建物とは異なり、「農地法」という特別な法律で厳しく規制されています。なぜこのような規制が必要なのでしょうか。
農地法は1952年に制定され、その目的は「耕作者の地位の安定」と「農業生産力の増進」、そして「国民への食料の安定供給」にあります。日本は国土が狭く、しかも国土の3分の2を森林が占めています。限られた農地を効率的に利用し、食料自給率を確保するため、農地が投機目的で売買されたり、安易に他の用途に転用されたりすることを防ぐ必要があるのです。
戦後まもない1946年から1950年にかけて行われた農地改革では、176万戸の地主から農地が強制買収され、475万戸もの自作農が誕生しました。農地法は、この改革の成果を固定し、農地を実際に耕作する人の手に残すための法律として機能してきました。
農地取得に必要な許可とは
農地を買う、あるいは借りる場合には、原則として農業委員会の許可が必要です。許可を受けずに行った売買や貸借は、法律上無効となり、登記もできません。
具体的には、農地法第3条に基づき、以下のような場合に許可が必要となります。
許可が必要な行為
- 農地の売買
- 農地の贈与
- 農地の賃貸借契約
- 農地の使用貸借契約
農業委員会は、申請者が本当に農業を行う能力と意思があるか、農地を効率的に利用できるかなどを審査します。この審査を通過して初めて、農地の権利を取得できるのです。
農地取得の基本要件
農業委員会が農地取得を許可するかどうかは、いくつかの要件に基づいて判断されます。新規就農者が特に注意すべき要件は以下の通りです。
全部効率利用要件 取得する農地のすべてを農地として効率的に利用することが求められます。具体的には、取得する農地の面積に応じた適切な機械や労働力を確保し、実現可能な営農計画を持っていることが必要です。
常時従事要件 農作業に常時従事すると認められることが必要です。原則として年間150日以上農業に従事することが求められます。週末だけの農業では認められないということです。
技術要件 農業を行うために必要な技術を有していること、または研修等により技術を習得する見込みがあることが必要です。農業未経験者の場合、就農前に1〜2年程度の研修を受けることが一般的です。
周辺農地調和要件 取得する農地の周辺で営農している人たちの農業に支障を与えないことが求められます。例えば、無農薬栽培が主流の地域で農薬を大量に使用するといった行為は認められません。
2023年法改正で何が変わったのか:新規就農のハードルが大幅に低下

下限面積要件の撤廃とは
2023年4月1日、農地法に大きな改正がありました。それが「下限面積要件の撤廃」です。この改正は、新規就農を目指す方にとって非常に重要な変更です。
従来の農地法では、農地を取得する際に最低限必要な面積が定められていました。具体的には、都府県では50アール(5,000平方メートル、約1,500坪)以上、北海道では2ヘクタール以上という基準があり、この面積に達しない農地取得は原則として認められませんでした。
つまり、小規模で農業を始めたい人も、まずは最低50アール以上の農地を確保しなければならず、これが新規就農の大きな障壁となっていたのです。実際に必要な面積が20アールでも、基準を満たすために30アールの不要な農地まで借りなければならず、その管理負担が新規就農者を苦しめていました。
法改正の背景と目的
なぜこの要件が撤廃されたのでしょうか。
農林水産省は、農業従事者の減少と高齢化が加速する中、認定農業者などの大規模な担い手だけでは地域の農業を維持することが困難になっていると認識しています。この20年余りで農業従事者は半減し、現在、一定規模の農業経営を行う販売農家は97万5000戸と100万戸を切っています。
下限面積要件を撤廃することで、小規模で農業を始めたい人も農業に参入しやすくし、農業従事者の裾野を広げることが改正の狙いです。多様な人材が農業に新規参入することで、耕作放棄地の解消や地域農業の維持につなげようとしているのです。
改正後も残る要件に注意
ただし、下限面積要件が撤廃されたからといって、誰でも簡単に農地を取得できるようになったわけではありません。
前述した「全部効率利用要件」「常時従事要件」「技術要件」「周辺農地調和要件」は引き続き残っています。また、農業委員会によって審査の厳しさには地域差があります。
下限面積要件の撤廃により、自分が実際に利用したい分だけの農地から始められるようになったことは大きな前進ですが、農業を真剣に行う意思と能力を示すことは引き続き必要です。
農地を取得する3つの方法:購入・賃借・使用貸借の違い

農地を取得する方法には、大きく分けて「購入(売買)」「賃借」「使用貸借」の3つがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った方法を選びましょう。
購入(売買)による取得
メリット 農地を購入する最大のメリットは、長期的な経営基盤を確立できることです。自分の資産となるため、自由な営農計画を立てられますし、将来的な資産形成にもつながります。また、農地に対して大規模な投資(ハウス建設、土壌改良など)も自己判断で行えます。
デメリット 最大のデメリットは初期投資の高さです。佐久市の農地価格相場は、2020年のデータで坪単価約7,000円から24,000円程度です。50アール(約1,500坪)の農地を購入する場合、1,000万円を超える資金が必要になることもあります。
また、購入後は固定資産税などのランニングコストも発生します。さらに、万が一農業から撤退する場合、農地の売却には制約があり、簡単に現金化できないというリスクもあります。
向いている人 長期的に腰を据えて農業経営を行いたい方、ある程度の自己資金がある方、または融資を受けられる見込みのある方に向いています。
賃借による取得
メリット 賃借の最大のメリットは、初期費用を大幅に削減できることです。農地の購入には多額の資金が必要ですが、賃借であれば年間の賃借料のみで済みます。佐久市の場合、50アールから1ヘクタールの農地賃借料は年間5万円から15万円程度が目安です。
また、リスクも軽減されます。農業が自分に合わなかった場合や、計画通りに進まなかった場合でも、契約期間満了後に撤退しやすいというメリットがあります。
新規就農者の多くは、まず賃借から始めて、ある程度軌道に乗ってから購入するというパターンを取っています。特に若い就農者ほど、自己資金の問題から賃借で始める傾向があります。
デメリット 長期的な安定性に不安があることがデメリットです。地主との関係が悪化したり、地主の事情で農地を返還しなければならなくなったりする可能性があります。
また、大規模な投資がしにくいという制約もあります。例えば、ビニールハウスを建設する場合、賃借地では地主の許可が必要ですし、契約終了時の扱いも問題になります。
向いている人 初期費用を抑えたい方、まずは小規模から始めて様子を見たい方、リスクを最小限に抑えたい新規就農者に向いています。
使用貸借による取得
メリット 使用貸借は、無償で農地を借りる契約です。高齢化や後継者不足で農地を管理できなくなった地主が、「農地を荒らすよりは使ってもらった方がいい」という考えから、無償で貸し出すケースがあります。
賃借料が不要なため、経営の初期段階で大きな助けとなります。
デメリット 法的な保護が弱いことが最大のデメリットです。使用貸借契約は、農地法上の保護が賃貸借契約よりも弱く、地主の都合で比較的容易に契約を解除される可能性があります。
また、口約束だけで始めてしまい、後でトラブルになるケースもあります。使用貸借であっても、必ず書面で契約を結び、農業委員会への届出を行うことが重要です。
向いている人 地域に強いコネクションがあり、地主との信頼関係が構築できている方に向いています。ただし、長期的な経営の安定性を考えると、補助的な位置づけで利用するのが賢明です。
佐久市で農地を取得する2つのルート:直接取引と農地バンク
佐久市で農地を取得するには、大きく分けて2つのルートがあります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選びましょう。
ルート1:農地法第3条による直接取引
特徴 地主と直接交渉し、売買契約または賃貸借契約を結ぶ方法です。農業委員会の許可を得る必要があります。
手順
- 農地情報の収集(農業委員会、地域の農家、不動産業者等)
- 地主との交渉・条件の合意
- 農業委員会への許可申請
- 審査(通常1〜2ヶ月)
- 許可
- 契約締結・登記手続き
メリット 地主と直接条件を交渉できるため、柔軟な取引が可能です。また、地主との良好な関係を築くことで、将来的な追加の農地確保にもつながります。
注意点 許可申請から許可まで1〜2ヶ月程度かかるため、スケジュールに余裕を持つことが必要です。また、農業委員会の許可を受けないで行った契約は法律上無効となるため、必ず許可を得てから正式な契約を結ぶようにしましょう。
ただし、初めての人がこれらを行おうとすると、手続きや窓口も多く大変です。
にじや不動産では、農地手続きの経験がある担当者がいますので、ぜひお気軽にご相談ください♪
ルート2:農地中間管理事業(農地バンク)の活用
特徴 市町村や農地中間管理機構(農地バンク)を介して農地を借りる方法です。この方法の大きな特徴は、農地法第3条の許可が不要という点です。
手順
- 市町村農業委員会または農地中間管理機構に相談
- 希望する農地の選定
- 農地中間管理機構が「農用地利用集積等促進計画」を作成
- 都道府県知事の認可・公告
- 効力発生(賃借権の設定)
メリット 農地法第3条の許可手続きが不要なため、手続きが比較的スムーズです。また、機構が間に入ることで、地主との直接交渉の手間が省けます。さらに、多くの機構は月1回以上の促進計画を作成しており、柔軟な対応が期待できます。
佐久市独自の農地バンク 佐久市では、農地中間管理事業に加えて、市独自の農地バンク制度も運用しています。貸付希望者の農地情報を市が管理し、新規就農者に紹介する仕組みです。
注意点 農地バンクを利用する場合でも、受け手が「地域計画(目標地図)」に「農業を担う者」として位置づけられている必要があります。そのため、事前に市町村または農業委員会に相談することが重要です。
佐久市の充実した新規就農支援制度を活用しよう
佐久市は、新規就農者の受け入れに積極的で、国の制度に加えて市独自の支援制度も充実しています。これらの支援をフルに活用することで、新規就農の成功確率は大きく高まります。
佐久市の相談窓口
佐久市役所 経済部 農政課
- 住所:佐久市(詳細は市役所へお問い合わせください)
- 電話:0267-62-3203
- FAX:0267-62-2269
- 対応内容:就農相談全般、支援事業の案内
JA佐久浅間 営農指導部 農家経営支援対策チーム
- 住所:佐久市猿久保882(JA佐久浅間本所2階)
- 電話:0267-68-1114
- 対応内容:毎月1回の就農相談会開催、栽培技術・経営アドバイス
長野県 佐久農業改良普及センター
- 電話:0267-63-3146
- 対応内容:技術指導、経営相談
まずは、これらの窓口に連絡して、就農相談会に参加することから始めましょう。相談は無料ですし、あなたの状況に応じた具体的なアドバイスを受けられます。
佐久市独自の支援制度
新規就農者定着支援事業補助金 これは佐久市独自の制度で、国の支援制度(農業次世代人材投資資金)の年齢要件などで対象とならない方でも支援を受けられる点が特徴です。
- 新規就農者:3年間で100万円以内(就農一時金と営農補助金)
- 農業後継者:3年間で50万円以内
具体的には、以下の2種類の補助があります。
就農補助金(就農一時金) 新規就農者および農業後継者が就農時に必要な設備等の購入経費として、1人当たり30万円以内が支給されます。
営農補助金 新規就農者の経営が安定する間に必要な農地賃借料、農業共済掛金、住居費などの賃借料等の経費として、1人当たり年額20万円以内が支給されます(最長3年間)。
この制度は、都道府県が実施する長期研修を修了した新規就農者や、農業で生計を維持している専業農家の農業後継者が対象となります。
農業研修生住宅 研修期間中の住宅確保を支援する制度です。農業と住居を同時に確保しなければならない新規就農者にとって、大きな助けとなります。
中古資機材のあっせん JAを中心に、中古のビニールハウスや農業用機械などをあっせんしています。新品を購入すると莫大な費用がかかるため、初期投資を抑えるために非常に有効です。
就農相談会の活用
佐久市では、市・県・JAが連携して毎月1回、就農相談会を開催しています。
相談内容の例
- 佐久市の農業環境について
- 栽培作物の選定
- 農地の確保方法
- 必要な資金と調達方法
- 研修先の紹介
- 支援制度の詳細
就農相談会では、実際に新規就農を経験したコーディネーターや、農業の現場を熟知した相談員が対応してくれます。漠然とした疑問から具体的な手続きまで、丁寧にアドバイスしてもらえます。
移住と新規就農を検討し始めたら、まずは就農相談会に参加することを強くお勧めします。佐久市への移住を本格的に検討する前に、一度相談会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
ステップバイステップ:農地取得から就農までの実践ガイド
ここでは、新規就農を決意してから実際に農業を始めるまでの具体的なステップを解説します。一般的には、就農の1〜2年前から準備を始めるのが理想的です。
STEP1:情報収集と就農相談(就農の1〜2年前)
やるべきこと
- 就農相談会への参加
- 佐久市の視察・農業環境の調査
- 栽培作物の検討
- 住居の下見
まずは情報収集から始めましょう。佐久市がどんな気候で、どんな作物が栽培されているのか、実際に足を運んで確かめることが大切です。
佐久市は標高600〜1,100メートルに位置し、高燥冷涼な気候が特徴です。昼夜の気温差が大きく、米は食味が良く、果実は糖度が高く、花きは発色が良いという特徴があります。
主要な作物としては、水稲(コシヒカリを中心に五郎兵衛米、さくさく米などのブランド米)、野菜(レタス、白菜、キャベツなど標高差を利用した長期出荷)、花き(カーネーション、トルコギキョウなど)、果樹(プルーン、りんご、ももなど)が盛んです。
特にプルーンは、代表品種「サンプルーン」の日本発祥の地として名を馳せています。
STEP2:農業技術・知識の習得(就農の1〜2年前)
やるべきこと
- 長野県農業大学校での研修
- 新規就農里親制度の活用
- 先進農家での実地研修
- 農業体験への参加
農業未経験者にとって、技術習得は必須です。いきなり農業を始めて失敗するよりも、しっかりと研修を受けてから就農する方が成功確率は格段に高まります。
新規就農里親制度 長野県には「新規就農里親制度」があり、「里親」として登録された熟練農業者のもとで研修を受けられます。実際の農業現場で学べるため、非常に実践的な技術を身につけられます。
長野県農業大学校
- 所在:小諸キャンパス
- 電話:0267-22-0214
- 内容:就農を考える方向けの農業体験研修(一泊二日)や、より本格的な長期研修プログラムがあります
研修先は、できるだけ佐久市内または近隣地域で探すことをお勧めします。地域によって気候や土壌、栽培方法が異なるため、実際に就農する地域で学ぶことが理想的です。また、研修を通じて地域の農家との人脈を作ることも、農地確保において非常に重要です。
STEP3:営農計画の作成
やるべきこと
- 栽培計画の策定
- 販売計画の策定
- 資金計画の作成(初期投資・運転資金)
- 5年間の収支計画の作成
営農計画は、後のSTEP4「認定新規就農者の取得」で提出する「青年等就農計画」の基礎となるものです。できるだけ具体的で実現可能な計画を立てましょう。
栽培計画
- 何を栽培するか
- どの程度の面積で栽培するか
- 年間の作業スケジュール
- 必要な機械・設備
販売計画
- どこに販売するか(JA、直売所、契約栽培、直販等)
- 販売価格の設定
- 年間の販売目標
資金計画
- 初期投資額(農地取得・賃借、施設、機械、運転資金)
- 資金調達方法(自己資金、融資、補助金)
- 生活費の確保
収支計画
- 年度ごとの売上予測
- 年度ごとの経費予測
- 所得目標
計画作成に不安がある場合は、佐久農業改良普及センターや市の農政課に相談しながら進めましょう。専門家のアドバイスを受けることで、より現実的な計画を立てられます。
STEP4:認定新規就農者の取得
やるべきこと
- 「青年等就農計画」の作成
- 市町村への申請
- 認定
認定新規就農者になることは、新規就農支援を受けるための重要なステップです。
対象者
- 原則18歳以上45歳未満
- 農業に関する知識や技能がある65歳未満(特例)
- これらの条件を満たす役員が過半数を占める法人
認定のメリット
- 青年等就農資金(無利子融資)の利用
- 農業次世代人材投資資金(経営開始資金)の受給
- 各種補助事業の優先採択
- 農業経営改善計画の作成支援
青年等就農計画の作成は、自分一人で行うのは難しい場合が多いです。佐久市の農政課や佐久農業改良普及センター、JA佐久浅間の担当者に相談しながら作成することをお勧めします。
STEP5:農地の確保
やるべきこと
- 農地情報の収集
- 農地の選定・交渉
- 農業委員会への許可申請(または農地バンクの利用)
- 契約締結
ここまでのステップを踏んできたあなたは、地域の農業委員会や農家とのつながりができているはずです。研修先の農家や地域の人脈を通じて、農地情報を得られることも多いでしょう。
農地選びのポイント
- 立地条件(住居からの距離、道路状況)
- 土壌条件(作物に適した土壌か)
- 水利条件(灌漑施設の有無、水の確保)
- 日当たり
- 周辺環境(近隣農家との関係、獣害の有無)
- 価格または賃借料
特に重要なのが、研修期間中の実績と地域での評価です。研修先や地域での振る舞いが良好であれば、地主も安心して農地を貸してくれます。逆に、評価が良くないと農地を借りられず、就農が遅れるケースもあります。
STEP6:資金調達
やるべきこと
- 自己資金の確認
- 青年等就農資金の申請
- 補助金の申請
- その他融資の検討
資金調達については、次のセクションで詳しく解説します。
STEP7:農業用施設・機械の確保
やるべきこと
- ビニールハウス等の施設の建設または購入
- トラクター、管理機等の農機具の購入
- 中古品の活用検討
初期費用を抑えるために、中古品の活用も積極的に検討しましょう。佐久市ではJAを中心に中古資機材のあっせんを行っています。
STEP8:就農開始
やるべきこと
- 営農開始届の提出
- 農業経営の開始
ついに、農業経営のスタートです。最初は小規模から始め、徐々に規模を拡大していくことをお勧めします。
資金調達の完全ガイド:無利子融資から補助金まで
新規就農に必要な資金は、平均で500万円から1,500万円程度と言われています。この大きな金額をどう調達するかが、新規就農成功の鍵となります。
新規就農に必要な資金の内訳
初期投資
- 農地取得費:200〜500万円(50アール〜1ヘクタールの場合、購入)
- 農地賃借料:年間5〜15万円(50アール〜1ヘクタールの場合、賃借)
- 農業用施設:100〜500万円(ビニールハウス等)
- 農業用機械:100〜300万円(トラクター、管理機等)
- 運転資金:50〜100万円/年(種苗、肥料、農薬等)
生活費
- 年間200〜300万円
農作物は収穫まで収入がないため、最低でも1年分の生活費を確保しておく必要があります。
全国農業会議所の調査によると、新規就農時に用意した資金の平均額は528万円でしたが、実際に必要になった資金は774万円だったそうです。計画よりも多くの資金が必要になることを想定しておきましょう。
青年等就農資金(無利子融資):最強の資金調達手段
新規就農者にとって最も重要な資金調達手段が、この「青年等就農資金」です。
制度概要
- 融資主体:日本政策金融公庫
- 融資限度額:3,700万円(特認限度額1億円)
- 貸付利率:無利子
- 償還期間:12年以内(据置期間5年以内)
- 担保:原則として融資対象物件のみ(実質無担保)
- 保証人:原則不要
対象者
- 認定新規就農者(青年等就農計画の認定を受けた者)
- 農業経営を開始してから5年以内
- 年齢:原則18歳以上45歳未満(特例で65歳未満も可)
使途
- 農業生産用の施設・機械
- 農産物の処理加工施設・販売施設
- 果樹・家畜の購入・育成費
- 農地の借地料・施設機械のリース料の一括支払
- その他経営費(農業経営開始に必要な資材費等)
メリット 無利子であることが最大のメリットです。通常の融資では利息の支払いが大きな負担となりますが、青年等就農資金は全借入期間にわたって無利子です。
また、据置期間が最長5年あることも大きなメリットです。就農してからしばらくの間は収入が不安定なため、返済を据え置けることは経営の安定に大きく寄与します。
重要な注意点 青年等就農資金は農地の「購入」には使えません。農地を購入したい場合は、自己資金を使うか、「経営体育成強化資金」(有利子)等の他の制度を利用する必要があります。ただし、農地の「賃借料」には使用可能です。
また、住宅ローンや奨学金などの借入金がある場合、審査に影響する可能性があります。金融機関は自己資金の状況や借入金の性質、返済の見込みなどを総合的に審査するため、既存の借入れがある場合は注意が必要です。
申請手順
- 市町村で青年等就農計画の認定を受ける
- 日本政策金融公庫(青年等就農計画認定市町村を所管する支店)に相談
- 経営改善資金計画書等の作成(都道府県普及指導センター等が支援)
- 日本政策金融公庫に申請
- 審査(書類提出から融資まで2ヶ月程度かかる場合もある)
- 融資実行
早めに相談を始めることが重要です。農地の取得や施設の建設など、実際に資金が必要になるタイミングから逆算して、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
その他の融資制度
経営体育成強化資金
- 農地取得にも利用可能(有利子)
- 認定新規就農者が対象
- 融資限度額:個人1億5,000万円、法人5億円
農業近代化資金
- JAバンク等が取り扱い
- 利子補給あり
スーパーL資金(農業経営基盤強化資金)
- 認定農業者が対象(新規就農者から一定期間後)
- 融資限度額:個人3億円、法人10億円
- 農地取得にも利用可能
補助金制度
農業次世代人材投資資金(経営開始資金)
- 年間最大150万円(最長3年)
- 対象:49歳以下の認定新規就農者
- 経営開始後の所得に応じて交付額が変動
佐久市新規就農者定着支援事業補助金
- 前述の通り、市独自の補助金
- 国の制度の年齢要件等で対象外の方も支援
資金調達の戦略
資金調達は、以下のような組み合わせで考えるのが一般的です。
- 自己資金:できるだけ準備する(目標:300〜500万円)
- 補助金:経営開始資金等を活用
- 無利子融資:青年等就農資金を活用
- 有利子融資:必要に応じて経営体育成強化資金等を活用
まずは就農相談会で、自分の状況でどのような支援を受けられるか確認しましょう。補助金や融資には年齢制限や前年所得の制限などがあるため、自分が対象になるかどうかを早めに確認することが重要です。
失敗から学ぶ:新規就農でつまずかないための7つのポイント
新規就農は魅力的ですが、残念ながら全ての人が成功するわけではありません。総務省の調査によると、新規就農者の35%が4年以内に離農しているという厳しい現実があります。
ここでは、先輩たちの失敗事例から学び、同じ轍を踏まないためのポイントを解説します。
ポイント1:資金計画は余裕を持って
失敗事例 Aさんは、ハウス建設用の手持ち資金が少なく、青年等就農資金と補助事業を当てにしていました。ところが、住宅ローンの残債があったために融資が受けられず、計画が大きく狂ってしまいました。
対策
- 必要な金額を事前に見積もりを取って正確に把握する
- 計画より2〜3割多めに資金を確保する
- 既存の借入金がある場合は、事前に金融機関に相談する
- 補助金や融資が「絶対に受けられる」という前提で計画しない
近年は物価高騰により、想定以上に費用がかかるケースが増えています。また、補助金が直前になって受けられなくなることもあります。「Plan B」として、補助金や融資が受けられなかった場合の対応も考えておきましょう。
ポイント2:小規模からスタートして段階的に拡大
失敗事例 Bさんは、補助金が多く出るからと、最初から大規模なハウスを建設し、広い面積で栽培を始めました。しかし、技術が追いつかず、病害虫の被害で大きな損失を出してしまいました。
対策
- 最初は小面積から始める
- 1年間のサイクルを経験してから規模を拡大する
- 補助金の額に惑わされず、自分の技術レベルに合った規模で始める
農業は春夏秋冬のサイクルで進むため、失敗を次に活かすまでに1年かかります。最初から大規模に取り組んで失敗すれば、取り返しのつかない大損害につながります。
「大きく始めたい」という誘惑はありますが、まずは小規模で経験を積み、PDCAサイクルを回しながら徐々に拡大していくことが成功への近道です。
ポイント3:研修期間中から地域との関係を大切に
失敗事例 Cさんは、研修先の地域で就農する計画でしたが、研修中の実績や振る舞いから地域での評価が得られず、地主から農地を断られてしまいました。
対策
- 研修先や地域の人との良好な関係を築く
- 地域の行事や共同作業には積極的に参加する
- 謙虚な姿勢を忘れない
- 研修先の農家への感謝の気持ちを持つ
農業は地域の人たちとのつながりが非常に重要です。特に研修先の地域で就農する場合、研修期間中の評価が農地確保に直結します。
また、新規就農後も、地域の先輩農家に指導を仰ぐことが多いため、最初から大風呂敷を広げて失敗すれば、先輩の顔に泥を塗ることになりかねません。
ポイント4:販路の確保を事前に考える
失敗事例 Dさんは、無農薬栽培でナスを大規模に栽培しましたが、販路の確保が甘く、豊作でも買い手がいないという事態に陥りました。
対策
- 栽培を始める前に販路を確保する
- JAへの出荷、直売所、契約栽培、直販など複数の販路を持つ
- 地域の先輩農家に販売方法を相談する
- 「作れば売れる」という安易な考えを持たない
いくら良い作物ができても、売れなければ収入になりません。栽培計画と同時に、販売計画もしっかり立てましょう。
ポイント5:栽培技術は謙虚に学ぶ
失敗事例 Eさんは、自分の目指す農法と異なるという理由で、研修先の農家や普及指導員のアドバイスを聞かず、独自の方法で栽培を続けました。結果、収量が上がらず経営が行き詰まりました。
対策
- 地域の栽培方法にはそれなりの理由がある
- 独自の農法を目指す場合でも、まずは基本を学ぶ
- 普及指導センターや先輩農家のアドバイスを素直に聞く
- プライドよりも実益を優先する
新規就農者は、理想の農業を追求したいという気持ちが強い傾向があります。しかし、地域で長年行われている栽培方法には、その土地の気候や土壌に適した知恵が詰まっています。
まずは基本をしっかり学び、経営が安定してから自分なりの工夫を加えていくのが賢明です。
ポイント6:ランニングコストを見落とさない
失敗事例 Fさんは、初期投資の計画は立てていましたが、ハウスの燃料代や農機具のメンテナンス費用などのランニングコストを十分に考慮していませんでした。その結果、資金繰りが苦しくなりました。
対策
- 年間のランニングコストを事前に試算する
- 燃料費、肥料・農薬代、修理費、賃借料などを忘れずに計上
- 生活費も含めた総合的な資金計画を立てる
初期投資だけでなく、毎年必要になる経費も忘れずに計画に入れましょう。
ポイント7:「失敗は成功の元」と捉えて前向きに
新規就農初期は、失敗がつきものです。完璧を求めすぎず、失敗から学ぶ姿勢が大切です。
特に、社会人経験が長い人ほど、「失敗すると恥ずかしい」という気持ちが強くなりがちです。しかし、農業は自然相手の仕事であり、経験を積むしかありません。
最初の3年間は、とにかく失敗を恐れずに色々なことを試し、学んでいく期間だと割り切りましょう。ただし、取り返しのつかない大失敗を避けるために、小規模から始めることが重要です。
まとめ:佐久市での新規就農成功への道筋
ここまで、佐久市で新規就農を目指す方に向けて、農地取得の方法から資金調達、失敗を避けるポイントまでを詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
農地取得の基本
- 農地の取得には農地法に基づく農業委員会の許可が必要
- 2023年の法改正で下限面積要件が撤廃され、小規模農業が始めやすくなった
- 購入・賃借・使用貸借それぞれにメリット・デメリットがある
- 農地法第3条による直接取引と、農地バンクの2つのルートがある
佐久市の魅力と支援
- 高燥冷涼な気候で高品質な農産物が生産できる
- 市独自の新規就農支援制度が充実
- 相談窓口が複数あり、手厚いサポートが受けられる
- 就農相談会が毎月開催されている
成功への7つのステップ
- 情報収集と就農相談(就農の1〜2年前)
- 農業技術・知識の習得(就農の1〜2年前)
- 営農計画の作成
- 認定新規就農者の取得
- 農地の確保
- 資金調達
- 農業用施設・機械の確保
- 就農開始
資金調達の柱
- 青年等就農資金(無利子で最大3,700万円)が最強の味方
- 補助金制度も活用する
- 自己資金も可能な限り準備する
- 農地購入には別の融資制度が必要
失敗を避けるための心得
- 資金計画は余裕を持って立てる
- 小規模からスタートして段階的に拡大
- 地域との良好な関係を構築する
- 販路を事前に確保する
- 栽培技術は謙虚に学ぶ
- ランニングコストを見落とさない
- 失敗を恐れず、学びの機会と捉える
今日からできる第一歩
佐久市での新規就農を本気で考えているなら、まず今日できることは以下の3つです。
- 佐久市役所農政課に電話して就農相談会の日程を確認する 電話:0267-62-3203
- 佐久市の農業環境について公式サイトで情報収集する
- この記事を保存して、ステップごとにチェックしながら進める
新規就農は、確かに簡単な道ではありません。しかし、しっかりとした準備と計画、そして地域の人々との良好な関係があれば、農業未経験者でも成功することができます。
2023年の法改正により、農地取得のハードルは大きく下がりました。今こそ、新規就農を始める絶好のタイミングです。
佐久市の豊かな自然の中で、自分の手で作物を育て、収穫する喜び。そして、地域の人々とのつながりの中で営む農業経営。そんな充実した人生が、あなたを待っています。
まずは就農相談会に参加することから、新しい人生の一歩を踏み出してみませんか。
佐久市は、あなたの新規就農を心から応援しています。

